レストランや食堂には、ちょぴりお得な料理のセットメニューがある。ハンバーグにライスまたはパン、スープ、サラダ、珈琲がセットになって、それぞれ単品でオーダーするよりかなり安くなる。天丼にミニたぬきそば、焼肉にミニ石焼ビビンバ、などなど。そんな中で圧倒的に人気があるメニューがラーメンとぎょうざのセットだろう。次はラーメンとチャーハンかもしれない。いずれにしても庶民、特に働くおとうさんたちのランチメニューには欠かせないアイテムでもある。
上田には、こうしたちょっぴりうれしいセットメニューの世界に燦然(さんぜん)?と輝く異端児がいる。市街地の小路を少し入ったところにある「福昇亭のラーメンセット」がその物件である。名前はいたって一般的な穏やかなものだが、ラーメンとセットになっているものがなんとあんかけ焼きそばなのである。あんかけ焼きそばとセットにするなら、ワンタンか野菜スープであってほしいと誰でも考える。しかし、しかしである。この店は、平然といたって当り前の様子で、ラーメンとあんかけ焼きそばのセットをメニューに入れている。「これはもしかして冗談かもしれない」と客寄せのギャグではないかと最初は思ってしまう。
初めてこの店に入ったとき「おもしろいメニューがあるねえ」と話していると、なんと常連らしい客が次々に「ラーメンセットください」と厨房に声をかけている。「まッ、まさか聞き間違えでは?」と思っても、実際にテーブルにはラーメンとあんかけ焼きそばが並ぶ。その光景はすごい。ところが、これが実に美味そうであるからびっくりする。二回めにこの店に来たとき、恐る恐るラーメンセットをオーダーしてしまった。以来、福昇亭のラーメンセットが定番になった。硬くもなく、そうかといって柔らかすぎないこの店独特の焼きそばに、程よい野菜のあんがかかっているところに、からし酢をたっぷりかけて頬張る。焼きそばを食べながら、細めの懐かしい味のラーメンを啜る。これが実に美味い。悔しいが、これが麺と麺の奇妙なセットであることなど忘れてしまう。このセットの話を知らない人に話すと「ふ〜ん、俺はそんなセット食わないよ」と決まって言う。ところが、一度この店に来ると認識が完全に変わってしまう。こうして、はまってしまった友人、知人が数え切れないほどいる。 |